みなさん、こんにちは。
ドイツのウナギイヌこと、ヘンリク・ボルクです。
このたびは脱ゴーマニズム研究所の客淫凶呪として招聘してくださり、まことにありがとうございます。
私がみなさんに学んでいただきたいこと、それは、日本という国がいかに悪であるか、この一点です。
基本はヴァイツゼッカー元大統領の演説です。
まずこれを是非マスターしていただきたい。
といっても、かれの主張は単純明快ですから、御安心を。
すべてはナチスのやったことであり、自分たちはナチスの被害者であった、これだけです。
日本にはあれをヴァイツゼッカーの非常に誠実な謝罪であると受け取っている人がたくさんいるようですが、的外れもいいところです。 あれはすべてをナチスのせいにしているだけです。ほかにはなにもありません。 これは苛烈な国際社会で生きてゆくための我々ドイツ人の知恵です。必要不可欠なアリバイ工作なのです。ブクブク。
むろん事実ではありませんが、そんなことは此の際どうでもよい。
そもそもヴァイツゼッカーなどは父親がずっと第三帝国の外務次官をしていた人ですから、第三帝国と一心同体であったといっても過言ではありません。
しかしそれをそのまま受け入れたのでは国際社会を生き抜くことはできません。
だからすべてをナチスに押しつけたのです。
さすがに父親譲りで、悪巧みに長けています。
このあたりが、私がかれを非常に尊敬するところです。
かれの演説に「過去に目を閉ざすものは結局のところ現在にも盲目となる」というくだりがありますが、その段でいくと、我々ドイツ人はさしずめ盲目のチャンピオンといえましょう。また、かれは、きちんと謝罪、賠償をしたドイツには友人が多いが、日本にはいない、とも語っていますが、あれもウソです。
ドイツに友人なんていません。
我々は、逃れられない犯罪に対してのみ、すこしばかり個人補償をしただけです。
すべてをナチスに押し付けただけで、国家賠償もせず、講和すら結んでない国に友人なんているはずないじゃありませんか。ブクブクブクブク。
もっとも、アメリカやイギリスにも真の友人などいないわけで、国際政治というのは元来がそういうものですから、謝罪したから友人がどうのという考え方自体が甘いのです。
しかし、ヴァイツゼッカーの論法は、日本人に対しては通常かなりの威力を発揮しますので、かならず習得するようにしてください。
よろしいですか?
ドイツの場合はひたすらナチスを糾弾、日本の場合はまるごとすべてを糾弾、これです。
むろん、私はこの論法をマスターしています。
だからこそ、いままで相当数の日本人を撃破、糾弾、かつ啓蒙することができたのです。
それゆえ「ボルクさんに聞け」はホロコーストや植民地支配などを棚上げしたい在日ドイツ人たちの合言葉になっています。
けれども、私の夢はもっと壮大です。
日本をドイツの同罪者にする、これはもう言うまでもないことです。
私は、そこからさらに一歩進んで日本をナチス以上の悪に仕立て上げよう、世界に類のない巨悪にしてやろう、そんなロマン溢れる夢を抱いているのです。そこで、私は南京問題に目をつけました。
煽動漫画家、小林よしのりへのインタビューもその試みの一環だったのです。
南京問題は狙い目です。
この問題をめぐっては、日本や中国に素晴らしい有為の同志が数多くいますし、国際的にも受け入れられやすい話だからです。
南京大虐殺を歴史的事実にしてしまう、これはむろんなのですが、私はこれをホロコーストと同様の犯罪にしてやろう、と考えています。
いや、それではまだ物足りない、私はむしろこれをホロコースト以上の、世界に類例のない犯罪として位置付けよう、それによってホロコーストのことは一刻も早く風化させてしまおうというじつに御茶目な思いつきを胸に秘めているのです。
これは無から有を生み出すようなものです。
大変な作業です。
しかし私はこれを是が非でも実現させるつもりでいます。
なぜなら、私はウナギイヌだからです。
此の際ですから、私がなぜウナギイヌと呼ばれているか、ご説明しておきましょう。
理由は至って簡単です。
本当にすべてはナチスのせいなのか、ドイツ人はナチスの被害者といえるのか否か、これらの問いを私はウナギのようにのらりくらりとはぐらかす。
そして私はいまでも内心ではナチスを懐かしむ第三帝国のイヌでもある。
したがってウナギイヌというわけです。
親しい友人たちは皆、私のことをウナギイヌと呼んでくれます。
ですから、先のヴァイツゼッカーの論法を用いる際は、心ならずも、アリバイ作りのためにやむをえずナチスを糾弾しているというわけなのです。
まことに心苦しいことです。
しかし、今後はこの南京問題というカードを駆使することで、さほどナチスに言及しなくても済みそうです。
南京問題は、ホロコーストを相対化し、忘れさせ、さらには、それにより国際社会においてドイツが日本より優位に立てるという可能性を秘めた、ウナギイヌとしては、一石二鳥、いや三鳥な代物なのです。
われながら良いところに目をつけたと自負しています。
私の工作というのは、とどのつまり、軍国日本はナチス以上の悪であるというプロパガンダを浸透させることで、日本をドイツの捨て石にし、それにより、ドイツの、ひいてはナチスの名誉を守ろうというものなのです。
しかしこれはあくまで内輪の話。
普段はむろんのこと隠し通しています。ところが、先日、驚愕すべき出来事がありました。
煽動漫画家、小林が、私のインタビューのことを逆恨みしてそれをバラしてしまったのです。
あろうことか、小林は私をヒトラー総統になぞらえ、私が後ろにナチスの旗を持っている絵を描き、それによって私がナチスであるということを暴露してしまいました。
私はナチスです。
それは間違いありません。
いや、ナチスというのは口が滑りました。ナチスでなく、ナチスシンパです。
それはともかく、事実とはいえ、このことを暴露するのは、今後の日本における私の工作や仕事、さらには生活にまで非常な支障をきたすことになるわけで、私からすればこれほど迷惑な話はありません。
それゆえ、私はただちに厳重に抗議しました。
しかし、小林はなぜか私の脅しに屈しなかったのです。
日本でこのようなことは初めてで、これには驚かされました。
思惑違いでした。当てが外れたのです。
こればかりはいまでも本当に不可解です。
とにかく、私は謝罪ならびに200万円を小林から取り損ねてしまったのです。
ブクブクブクブク。
つきましては、みなさんに、私を支援する慈善活動に対する500万円の寄付を求めたいとおもいます。
小林のときより金額が増えてるじゃないか、などと、野暮なことを言うのはやめてください。
そんな細かいこと、気にしない、気にしない。ブクブクブクブク。
このヘンリク・ボルクを脱ゴーマニズム研究所の客淫凶呪として招聘した以上、それくらいのことは当然してもらえるものと信じます。
これについては2000年某月某日までにご回答いただくことを要請いたします。
さもなければ、他の措置を考えなければならなくなるかもしれません。
あらかじめ言っておきますが、これは脅しです。
なにか対抗措置をとられたら、私にはどうすることもできません。
よって、みなさんが早々にこの脅しに屈服することを望みます。
ヘンリク・ボルク