脱ゴーマニズム宣言裁判を楽しむ会議室
1998/03/31(04:24) from 143.90.207.207
作成者 :スグル(series@anet.ne.jp)
ムチャ言わないで下さいよ
では「脱ゴー宣」の論理について。上杉さんは「小林君と心中しないで!」と題した文章の中でこう言っています。

>拙著の29ページに小林君の漫画のコマを引用したのは、彼の主張を歪曲するものだ、ということだと思います。引用するな、というところから、今度は引用の仕方が悪い、あるいは少なすぎる、というお叱りのようです。

はい、全く違います。「全部引用しろ。いや、やっぱりするな」などという、わけの分らない事は言ってません。もちろんマンガの引用には納得いきませんが。
僕は「マンガの引用は合法でないと思う。しかしそれだけでなく『脱ゴー宣』は引用の仕方も問題だ。よしりんの文脈と真意が殺されてしまっている。全然正確な引用じゃない!」と主張しているのです。その例の1つとして第5章を提示したのです。

>全部を引用せよ、ということでしょうか?そんなムチャは言わないで下さいよ。
(中略)
>上で言えば、「BはCである」という主張は、
>そこにだけあるものです。
(中略)
>むしろ問題なのは、この「問題のコマ」をなんとか隠そう、あるいは別の解釈を付けて論理破綻を見えなくさせようとするお二人の姿勢です。

はい、ですからそんなムチャは一切言っておりません!どこをどうしたらそんな論理が出てくるんでしょうか。「全部引用しろ・するな」ではありません。「文脈を殺すな」と言っているだけなんです。問題の引用コマは前の文章を「根拠」にした言葉なのです。よしりんが問題のコマの前に慰安婦の証言について「検証していた事実」と、前後の文脈で事実関係を確かめるために「信憑性を重視していた事実」を省略するな!と言っているんです。全部の引用がムチャだと御自分でわかっていらっしゃるなら、前後の流れをあなたの言葉でちゃんと説明するべきだったのです。あの省略がなかったら、

>被害者の訴えを聞いた警察官がすぐ加害者側に『あんたやったの?』と尋ねにいって『やってない』と答えられたら『これでお互い相殺だ』と上のように言うのかい?
(「脱ゴー宣」第5章より)

この的外れなくだりは完全に意味を成さなくなるんです。悟のぱぱさんがおっしゃるように「そのコマだけを引用しているが故に可能な批判」でしかないのです。(大体マンガだってことを忘れてませんか?上杉調に言えばこれこそ「ちっこい、ちーっこい」ですよ…)
ですから僕は「別の解釈を付けて論理破綻を隠そう」などしていないのです。(論理破綻すらしていないですよ。)「ゴー宣」の文脈を見れば「相殺による解決なんか試みてない」のが明らかなんですよ。前後の省略がされていなかったら「被害者の証言を加害者の証言で相殺している!」などというトンチンカンな結論など出てくるわけがありません。

>「彼はそんな人ではない」とか、彼になり代わって弁護していることです。「小林君はこんな人だ」という思い込みが強すぎはしないでしょうか?

確かに僕は「よしりんがそんなズサンな論拠で話を進めるわけがありません」と言いました。でもそれが上杉さんには「彼はそんな人ではない」と言っているように聞こえたのですか?僕は別に弁護してるわけではありませんよ。「あなたの批判は的外れだ」と主張してるだけです。僕はよしりんに直接会った事もありませんし、まして人格などわかるはずもありません。それこそ単なるあなたの「思い込み」ですよ。
ならば僕も上杉さんに1つ疑念がありますよ。問題の引用コマは前後の文章(つまり慰安婦の証言の信憑性と検証)とセットで掲載すると、上杉さんにとって非常にマズいでしょ。慰安婦の証言が信用できないのがバレちゃいますから。だから意図的に省いて別々の章(5章と6章)で紹介した、という疑念です。

では「証言は証拠なのです!」に反論します。あなたの想像力がとても深いのはわかりました。確かに遠い過去の出来事には想像力を働かせていくしかないでしょう。しかし、

>「証言は証拠にならない」という主張は、こうした歴史学や裁判での証言の価値の大きさを無視するものです。「証言は証拠」なのです。

「『証拠能力の無い証言』は意味が無い」という僕の主張を見てくれてますか。裁判では信用出来ない証言は却下されて終わりです。証言に耳を傾けるのは構いませんが、それだけでは「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」と言ってるようなものですよ。検証しなくては話が進まないでしょう。秦氏やよしりんは何か間違った事してますか?

>ある証言が他の物証・書証・証言と矛盾や対立しない場合は、それ自体が一つの証拠となります。さらに、その証言者と異なる立場にいたり、証言者と無関係な位置にいる人からはっきりと同じ証言が得られる場合、その証言は決定的な証拠となります。

ムチャは言わないでください。「被害者が名乗り出てる」だけで国家補償なんて出るわけないでしょう。慰安婦問題を解決するには強制連行した日本人の証言、(恐ろしい光景を)目撃した地元住民の証言、そしてそれらに合致する物証・書証がなければ不可能です。強制連行を目撃した人は1人も出てきません。強制連行した人も(吉田清治を除いて)1人も出てきません。証言に合致する物証・書証も何も出てきません。元兵士は皆「強制連行などなかった」と言ってるし、あなたも知っているはずでしょう。慰安婦の証言が「他の物証・書証・証言」と全然合致しないから今現在も裁判で勝てないんじゃないですか。

>「騙されて連行された」という証言は海を超え、国境を超えて無数に出てきているのです。これを事実と認定することにほとんど問題はありません。

被害者の証言だけでは犯罪は成立しません。「私たちは上杉聰の被害者だ」と100人名乗り出たら、あなたはそれを何の検証も反論もせずに認めるんですか。それ以前に一方の証言だけを鵜呑みにするのは民主主義に反していませんか。加害者が日本だと証明もされてないのに、飛躍しすぎですよ。

では最後に
僕は上杉さんに対して「なぜあなたは兵士・日本軍を『加害者』と断定できるのか」と質問しました。今回の上杉さんの記述を見てみると「(客観的に見て)加害の立場にいた人」と表現されていました(笑)。これは質問に対する答えと受け取ってよろしいでしょうか。では今後、公の場で「兵士は加害者だ」と最初から断定して論を進めることは控えてもらえるでしょうか?(せめて「被疑者・容疑者」くらいにとどめてほしいですね。)
そして上杉さんは「小林は『当事者同士の証言が対立している時、双方の証言に決定力はない』と言っている」と主張されていましたね。この主張は的外れですよ。僕は「返事その2」で反論しましたけど、上杉さんは「論理破綻を隠すな」と言っただけで、反論してくれていません。

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