脱ゴーマニズム宣言裁判を楽しむ会議室
1998/04/15(21:52) from 133.205.51.214
作成者 :上杉聰(CYI00373@niftyserve.or.jp)
軍命令の存在について
 悟のぱぱさんから誠実な書き込みをいただき、ここ数日はたいへん嬉しい気分です。このあと私には、また大変忙しい仕事が待っていますので、当分の間(10日間くらい?)は書けないと思います。しかし、悟のぱぱさんへはお返事を急ぐべきと考え、パソコンに向かいました。
 まず、私は前回、次のように書きましたーー

>>「悟のぱぱ」さんは、この会議室への初登場の日、開口一番、語気鋭く、「根拠というからにはもちろん、証言以外の何かがあるはずですよね。証拠をお示しくださいませんか・・私が申し上げているのは客観的な根拠です」(3/23)と詰問されました。

 これについて悟のぱぱさんは、次のように認めらましたーー

>この部分に関して私は、上杉さんふくめ、みなさんに私の質問の言葉足らずをお詫びしたいと思います。私は吉田証言の根拠をもとめ、「証言以外の何かがあるはずですよね。」と申し上げました。この場合の証言というのは、私は吉田証言という意味で使ったのであり、つまり、本人の証言以外の何かがあるはずだという意味です。

 つまり、証言も含めて証拠であるというのが悟のぱぱさんの真意であるとされた上で、このようにご自身の表現の足りなかったところを詫びる態度を拝見し、嬉しくなったのです。もしかしたら話せば通じあえるかもしれない・・という期待が生まれました。その点では、先回の悟のぱぱさんの書き込みの「・・歪曲しないでください(笑)」の箇所を、私も「少し苦しそう(?)に笑っておられましたが・・」と、茶化し気味に書いたことを、ここにお詫びいたします。

 なお、敢えて述べさせていただくならば、「(笑)」などの表現は、相手を嘲笑したとも、自嘲したとも、あるいは苦笑い、てれ笑い、誤魔化し笑いと、何とでも取れる表現ですので、誤解や相互不信を作らないために、使われないのがよいと思います。

 また、貴方は私への怒りがあると書いていらっしゃいましたーー

>>私があなたにちょっとした怒りを感じているのは、あなたの間違いや引用の仕方ではなく、自分がいい加減な思い込みで人の台詞を作りながら・・なおかつ、指摘しても、それに対し一言の弁明もないっていう姿勢です。

これはおそらく、私が「小林君と心中しないで!」(3月28日)と題して、次のように書いたことを指しておられるのだろうと思いますーー

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| 悟のぱぱさんは「小林よしのりのしたかったことは」と、「彼はそんな人ではない」とか、彼になり代わって弁護していることです。「小林君はこんな人だ」という思い込みが強すぎはしないでしょうか?
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 貴方は、上のように私の文を引用をし、以下のように抗議しておられますーー

>これこれこれこれ、(中略)私は一言も「彼はそんな人ではない」とは言っておりませんし、そういう捉え方をされる表現をしたこともありません。これは単なるあなたの思いこみではありませんか?

 ところが、上記の枠で囲った私の書き込み部分の全文は、以下のようになっていますーー

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| スグルさんは「よしりんがそんなズサンな論拠で話を進めるわけがありません」と書き、悟のぱぱさんは「小林よしのりのしたかったことは」と、「彼はそんな人ではない」とか、彼になり代わって弁護していることです。「小林君はこんな人だ」という思い込みが強すぎはしないでしょうか?
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 つまり、
スグルさんの発言は:「よしりんがそんなズサンな論拠で話を進めるわけがありません」「彼はそんな人ではない」
悟のぱぱさんの発言は:「小林よしのりのしたかったことは」”他人になり代わって弁護している”

という対応関係にある文章なのです。たしかに貴方は「そんな人ではない」などとは書いていませんし、同時に私もそのように貴方が書いたとは主張していないのです。これは誤読ですし、引用も不正確ではないでしょうか? ただ、私の文章が大変に稚拙で、貴方のおっしゃるような誤解を生む可能性は、たしかにありました。

 この点のご指摘が先にあったとき、いつかゆっくり私の文章を冷静に読み返していただければ、自然と気付いていただけるだろうと考え、敢えて放置しました。でも、それによって傷付いておられたのですね。私の文章力の不足をおゆるしください。

 それと、私としては、スグルさんと一緒にお二人を批判したために紛らわしくなったことも反省しました。以後は、なるべく個人宛の書き込みとし、ごっちゃにならないように心掛けてきたつもりです。そのことはまた、一人一人が違うということを明確にする意味でも大切だと考えています。

 しかし、その分、一人一人に誠実に応えるというのは時間的に大変になっています。今日もこれだけ書くのに、同じ家の中でパソコンと携帯パソコンを何回も往復しつつ作業をしなければならない個人的な事情もありますが、2時間半かかってしまいました。もう、以下はゆっくりお答えする時間がありませんので、簡潔に書きます。そして、もっと整理してから質問していただきたいものもありますので、それらは申し訳ないのですが、省略させていただきます。

>これらの証言の中で、軍命令として強制連行が証明されているものはありますか。

 「軍命令として強制連行が証明されているもの」という意味が少し不明です。フィリピンや中国での行為は、軍によって直接におこなわれたものです。したがってその責任は、無条件に日本の国に帰属します。たとえそれが統制違反によるものであっても、ですーーこれについて、さらに説明が必要でしょうか?

 あるいはご質問の趣旨が、「軍上層部の指令はあるのか?」というものであるとすれば、中国での鈴木陸軍中将の命令もそうですし、前の台湾への外務大臣の指令の直後に、「慰安婦」50人をボルネオに向けて輸送するため、安藤年吉・台湾軍司令官が東条英機・陸軍大臣に宛てて、「慰安婦」業者の渡航許可を求めた資料が残されています(『従軍慰安婦資料集』144〜5頁)。これには回答書が発見されていませんが、少なくとも、台湾軍司令官の命令によって、50名の「慰安婦」の移送が、旅券の発給もなく行われようとしたことは間違いありませんし、東条英機がそれに許可を与えていた可能性もーーこれらは書証としてーー示されています。

 これ以外にも、慰安所が軍の命令によって作られ、女性たちがその命令で集められた資料の存在は、数え上げればきりがありません。稲葉正夫編『岡村寧次大将資料』戦場回想編(原書房、302頁)にもーー。

「かく申す私は恥ずかしながら慰安婦案の創始者である。昭和7年の上海事変のとき・・派遣軍参謀副官であった私は、同地海軍に倣い、長崎県知事に要請して慰安婦団を招き・・」

と、岡村大将自らが告白しています。陸軍の慰安所が創設されたばかりのこの時期は、まだ「慰安婦」は日本人でしたが、以後、次第に植民他の女性を「慰安婦」にする場合も、日本軍の指令によるものであったことを示す資料は、やはり数多く出てきています(以上については、吉見・川田編『「従軍慰安婦」をめぐる30のウソと真実』大月書店、14ページ以下にも書かれていますのでご参照下さい)。

 では、今日はこの辺で・・。しばらく書き込みのできない時期に入ることをお許しください


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