少しさかのぼって考えたい。そもそもこの掲示板を含む「楽しむ会」HPは、A=以下引用(投稿#4:記者会見でのコメントを紹介します)==========
「慰安婦」とされた被害者に対して小林氏が行ってきた名誉毀損にたえかねて私は『脱ゴーマニズム宣言』(東方出版)を書きました。彼に抗議するにすでに深い傷を負っている被害者が前面に立つのは忍びないことであり、日本人がこれに立ちはだかるべきと考えてきました。今回被告となることによって、私は「慰安婦」問題で当事者になれたことを誇りに思うべきと考えるのです。(後略)
==引用終わり================================
とする上杉氏とともに、勝訴が確実である裁判の経過をむしろ「楽しもう」と考えた支援者がたが運営するものである。
その趣旨の通り、この掲示板においては脱ゴーマニズム宣言裁判および関釜裁判の経過・資料の公表から、自由主義史観論者との議論まで幅広いテーマで投稿がなされてきた。
ところで、ここに、上杉氏によってなされた投稿の一文がある。
B=以下引用(投稿#216:「慰安婦」証言を全面的に証拠として採用)=====
これまで、自由主義史観の人たちや小林君は「証言はどうにでも作れるのだ」(『新ゴーマニズム宣言』第3巻、177頁)と、被害証言の価値をおとしめることに力を注いできました。「証言を裏付ける『証拠』がいる」(同前、20頁) 「確実な書証を出せ!」「目撃者はいるのか?」などと批判していたので、このHPで私は、「証言は証拠なのです」を書き、証言の意義を述べました。
==引用終わり================================
検証したところ、たしかに新ゴーマニズム宣言3巻の20頁および177頁に、上杉氏の引用と一字一句違わないセリフが存在した。このセリフが引用文Aの「名誉毀損」の一部分を構成するかどうかを判断する知識は私にはないが、少なくとも慰安婦への「中傷誹謗」であると上杉氏は主張していると考える。
さらに検証を進めるため、該当のセリフを含む2つの章を通読してみた。
・「第24章 従軍慰安婦カマトトマスコミを撃つ」:20頁を含む
・「特別編 ゴー宣版 従軍慰安婦資料集」:177頁を含む
である。第24章は「従軍慰安婦への強制連行の有無」に関する論争をモチーフとして果てしなく国家に謝罪を求める運動家の姿勢を糾弾する内容、特別編は作者の予想以上に高まりを見せた「慰安婦問題」について、主に吉見教授をはじめとした「強制連行あり派」の論拠を突き崩そう、との試みとなっている。
今回私は小林氏の2つのセリフが「慰安婦への中傷ではない」とは主張しない。本来ギャグ漫画家である氏の論調は時に毒を含み、読む者によっては著しく傷つく可能性もある。それを中傷、ととらえる人も必ず存在するであろうと認める。
私の主張は、以下の通りである。
・第24章は慰安婦問題(を含む)運動家への批判がテーマである。
・特別編は慰安婦強制連行説の欺瞞性の指摘がテーマである。
運動支援者のひとりであり、吉見説を採る上杉氏が、上に掲げた2章において、小林氏がテーマとした批判の対象群に含まれることに異論はないはずである。
この時点で上杉氏はすでに”「慰安婦」問題で当事者になれ”ているのである。上杉氏は自分がよって立つ「吉見説」への指摘に対する反論、および運動の方向性に対する批判への反論を”当事者として”行うことができ、また多くの賛同者のためにも反論する義務がある。さらに上杉氏はこうした反論と同時に、「私を批判せんがために慰安婦を中傷するとは何事だ!」と小林氏を糾弾する資格を持つ。
ところが、上杉氏は、「小林氏は(私への批判とは無関係に)慰安婦への中傷誹謗をしている」と広く喧伝する行動を選択した。
「私を批判せんがために慰安婦を中傷するとは何事だ!」は小林氏の主張に対する直接の反論および慰安婦の擁護である。だが、上杉氏がとった行動は、
①「私を批判せんがために」を省略して、小林氏が「慰安婦を中傷」したことをを強調 する(重ねて言うが、私は「中傷しなかった」、とは言っていない)。
#ここで批判の矢面に立っているのは慰安婦であるかのようにイメージ操作し、上杉 #氏自身は慰安婦を盾にして小林氏の批判を、少なくとも弱めようとしている。
②自分が盾にしたことで”批判の前面にさらされる”構図となった慰安婦を擁護するた めに小林氏を糾弾する
という2段階を経て小林氏への反論をする形になっており、ここに”慰安婦を中傷する極右極悪人小林よしのりから傷ついた慰安婦を守るためあえて立ち上がった義憤の人”という、脱ゴーマニズム宣言の上杉聡氏が誕生する。
だからこそ引用文Aのようにまるでそれまでは当事者ではなかったといわんばかりのコメントが可能なのだろう。
胡散臭い。
私が考える「胡散臭くない上杉聡」の記者会見はこんな感じ。
「慰安婦」とされた被害者に対して小林氏が行ってきた名誉毀損にたえかねて私は『脱ゴーマニズム宣言』(東方出版)を書きました。我々の学説や支援団体を批判したいあまりに彼は元慰安婦の方々を中傷誹謗するという暴挙に出ました。彼の批判についてはかねてから反論を行っていますが、彼に「利用」された元慰安婦の方々の痛みを思うと、訴訟になる危険を冒してでも小林氏のマンガを引用して反論を加え、ゴーマニズム宣言の読者に小林氏の欺瞞性を明らかにする必要があると判断したのです。
日本国内での「慰安婦」論争に、被害者が巻き込まれてしまったことを遺憾に思います。(後略)
慰安婦を本当に利用しているのはどっちだろうか、と考えている。
追記:なお、引用文Bを含む文章は現在、「楽しむ会」HP上の「続・脱ゴーマニズム宣言」に、おそらく投稿のままの形で掲載されている。