脱ゴーマニズム宣言裁判を楽しむ会議室
1998/05/13(03:00) from Anonymous Host
作成者 :菅二郎(at33@hotmail.com)
Re: 人道に対する罪についての質問
悟のぱぱさん、こんにちは。

悟のぱぱ wrote:
>第4次ジュネーブ条約の採択は1949年だと思います。

すいません、第4次ジュネーブ条約の一部である
Convention on the Prevention and Punishment of the Crime of Genocide
の1948年の国連総会での採択と混同していました。


>この条約について、争われたことがないのはニュルンベルグ裁判も東京裁判も結審しておりますので当然だと考えます。
>そもそも、罪刑法定主義という大原則を破って行われたこれらの国際裁判の方こそが、文明社会にはあるまじきことで非難されるべき事であり、この「判例」を以て事後法による裁きを正当化する事が出来るようになるとすれば、パール博士も慨嘆した如く、「法の真理は失われた」というべきでしょう。
>「人道に対する罪」を含む第二次世界大戦の反省からこの条約改定が行われたのは明らかですが、第二次世界大戦の事件についてはすでに国際裁判も終了した後、この条約に基づいて争うというのは問題外かと思います。

ニュルンベルグ国際軍事裁判、東京極東国際軍事裁判などは全体主義の撲滅のための必要悪だったのかもしれませんが、近代法の原則を無視するという暴挙であったといえるかもしれませんね。
近代法にもとづく法体系をもっている国ならば、これらの「判例」を前例とすることはできないでしょう。


>むしろ反対で、先ほど述べましたように、第二次世界大戦の反省からの条約改定であり、これら二つの国際裁判こそが、法の大原則を曲げた事後法による非文明的な裁判であったと言うべきでしょう。
>また、その時点で採択されていない条約を適用するというのは事後法ですらありません。事後法ならば、少なくとも裁判の時点ではその法は存在するわけですが、第4次ジュネーブ条約となれば、法すらも存在しない状態で裁いたということになり、これはもはや、事後法すらも超える非文明的な所業でしょう。

それがretroactiveな(遡及)適用というものですよね。
間違ってはいないと思いますが・・・
でもよく考えると、それは前近代的というか、かなり野蛮ですよね。
理念は高くても、手続きは野蛮であったといえますね。


>>ここでは第4次ジュネーブ条約に抵触すると思われる原子爆弾による無差別爆撃などは問われていません。これは一種の二重基準だと言ってよいかもしれません。

>二重基準というよりは、やはり、戦勝国は裁く者であり、戦敗国は裁かれる者であるという厳然たる事実でしょうね。

たしかにそういう厳然たる事実は横たわっています。
ただよく考えると、これは典型的な二重基準です。
つまり枢軸国側の平和に対する罪、戦争犯罪、人道に対する罪は処罰されるが、連合国側の平和に対する罪、戦争犯罪、人道に対する罪は処罰されない。
もし連合国側がこれらの罪を犯してなければ問題はないのですが、焼威弾・原子爆弾による日本本土無差別爆撃は明らかに人道に対する罪に抵触していると思います。
たしかに強制売春や強姦などの人権侵害に遭われた慰安婦の方たちの救済は必要だと思います。
しかし原爆後遺症や爆撃による被害を遭われた方の救済は考えなくてもよいのでしょうか。
アンフェアな感じがします。


>確認したいのですが、あなたがこの問題にこだわる意図がよく分からないのです。
>人道に対する罪、或いはジュネーブ条約によって従軍慰安婦問題になんらかの結論を出すことができるというお考えなのでしょうか?
>具体的に言えば、ジュネーブ条約を事後法として第二次大戦時の日本を裁くことで従軍慰安婦問題になんらかの法的解決をしようという意図なのでしょうか?

結局はこの慰安婦補償問題について日本政府は現時点でも法的責任があるかどうかは、人権侵害に関しては慣習法である国際法がretroactiveな(遡及)適用を許されるのかどうかのこの一点に懸かっているのでは、と思ったからです。

そして韓国市民権をもつ元慰安婦の被害者に限って言えば、現時点では、日本政府が法的責任を見い出すことは出来ないのではないかということです。
もちろん前国連事務総長の見解などにもとづけば見い出すことが出来るのかもしれませんが、その理論で行くと、日本本土無差別爆撃の被害者も救済は終了していないことになります。
ですから、戦争犯罪、人道に対する罪は時効によって妨げられないという論はまだまだ議論の域から完全に脱したとは言えないのであり、直ちに法的責任が生ずるという結論は、導き難いと思います。

もちろん、法的責任がないからといって救済する必要はないと言っているのではありません。
ただ結局、現時点では日本政府は道義的責任しか見い出すことはできないのであって、それにもとづく救済措置を迅速に行うより他はないのでは、と思います。


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