ハーグ条約と個人の賠償請求権&道義的責任


投稿番号:12548 (2000/08/28 15:32)
投稿者:サンドウィッチ(素人の感想)
mail:sandwitch@mail.goo.ne.jp


内容

こんにちは。
さて、ご紹介のHPを見てきました。遺棄毒ガス弾の処理の話から、「細菌戦被害」の話に飛んでいるような気がしますが、それは置いておいて、とりあえず感想を。(笑)
この投稿で論点が漂流しそうで心配ですが、論点の確認は別途投稿させていただきます。

1. ハーグ陸戦条約と個人の賠償請求権

則巻さんもご理解されているようですが、国際法の判例から見ても、この「細菌戦被害訴訟」には大部無理がありますねえ。このHPの主張の柱は、
※『ハーグ陸戦条約では、個人の国家に対する請求が認められている。』
とうことです。しかし、この手の訴訟の判例がいくつかありますが、その全てが上記の考えを否定しているようです。すなわち、

① ハーグ陸戦条約は、国家間についての規定であり、個人の賠償請求権を認めたものではない。
② 世界各国の判例でも、ハーグ条約に基づいて国の個人への賠償を認めた例はない。
③ 「ハーグ条約で個人の賠償請求権を認めている」という解釈は独自のもので、その見解を採用することはできない。

と完全否定されています。この判例を知りながら、この手の訴訟を繰り返し起こすのは、単なる政治的プロパガンダと言われてもしょうがないですね。
では、個人への補償はどうなるのでしょうか。これは、自国民への補償は各政府が行うのが原則です。つまり、中国人への補償は、中共政府が行うのが筋です。

2. 道義的責任

さて日本国の法的責任について、上記のようにその追求は難しいようです。
では、道義的責任についてはどのように考えるべきなのでしょうか。

(1) 謝罪について
外国ドラマや映画で、良くあるセリフで、「君は僕の謝罪を受け入れてくれるかい?」というものがあります。これは、謝罪をする側にも、謝罪を受ける側にも、非常に大事な発想です。

日中共同声明には、「日本側は 過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し 深く反省する。」と記載されてます。当時の田中首相が周恩来首相との会談でまとめたものです。つまり、「日本国の代表が謝罪し、中共の指導者がそれを受け入れた」のが日中共同声明です。中共が、もしもこれでも不満だと言うならは、日中共同声明は破棄すると、はっきりと宣言すべきですね。また、国民が政府の受け入れた謝罪に対しなお文句があるとするならば、それは自国の政府に向けるべきものです。
国家レベルにおける謝罪については、村山首相時代の国会決議(たしか)等々、幾度も触れられています。それに味をしめたかのような、前回の江沢民主席の訪日での放言には、さすがに国内の反発が強かった。(笑)繰り返しますが、中共は日中共同声明により日本の謝罪を受け入れています。

(2) 道義的補償問題について
さて補償問題について、その道義的側面を考えてみます。
たしかに、戦争の被害者に対するなんらかの補償は必要でしょう。その受けた被害の悲惨さを聞くときには、その感を深くします。しかし、そこにも何らかの論理性と、平等性を求めなければならないのもまた事実です。

日本の中共に対するODAやその他の援助額は、3兆円近くに達すると聞きます。
河野外相の訪中の手土産は、180億円だそうでね。(自民党の圧力でお土産にならなかったようですが:笑)このような莫大な援助を中共が受けられるのは何故でしょうか? 日中共同宣言で、お互いの請求権を放棄していますが、この巨額な援助と戦争補償は全く無関係なのでしょうか?

先に、個人の補償請求権はハーグ陸戦条約上は存在しないとの判例を例示しました。また、個人の補償は、各国政府による自国民への補償により行われるとしました。ですから、この手の日本国を相手とした訴訟は、本来、自国政府を相手取って起こすべきものと考えます。日本は、それに見合う財源を「道義的責任」として十二分に中共に提供しています。この中には、中国大陸で接収された、日本国の財産や、一般市民の財産、虐殺された日本市民の補償請求権も含まれているのです。

さて、以上のように、道義的にも、日本は中共に対して十分な配慮をしていると考えられます。にもかかわらず、当該HPのような人々がいる。これは、自国民への補償を顧みない、中共政府の責任が大きいと考えます。財源が無いわけではないのですから。

では。


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