「悪魔の飽食」を現在の目で振り返る


投稿番号:12595 (2000/09/02 13:43)
投稿者:サンドウィッチ(日本茶から自己転記)
mail:sandwitch@mail.goo.ne.jp
http://www.sorifu.go.jp/intro/kanbo/ikikagaku/


内容

こんにちは。
さて、日本茶に投稿した拙稿を転記させていただきます。
投稿時期が前後することをご了承ください。

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「悪魔の飽食」を現在の目で振り返る(1)

こんにちは。
某所で、自称「国際法の専門家」の方から、『「悪魔の飽食」を読みもしなければ知りもしない』と、断言されたサンドウィッチです。(笑)まあ、約20年(原文では30年を訂正)も前の話ですので、ここで、「悪魔の飽食」について振り返ってみるのもおもしろいと考え、投稿します。

1. 共産党機関紙「赤旗」に連載

「悪魔の飽食」は、小説家森村誠一が共産党機関紙「赤旗」に連載したものです。内容は、日本の731部隊に関するもので、後に光文社より単行本として出版されました。そして、これが大きな社会的問題となったのです。


2. 偽写真、歴史改ざん問題発覚

その問題とは、本の内容の残虐性はさることながら、使用されたグラビア写真や証言内容に大きな疑問が出されたことです。まあ、最近話題になった、「レイプオブ南京」の偽写真・内容誤謬騒動と同じかそれ以上と考えて良いでしょうね。実に本に載った3分の2近く(20/35)の写真が偽写真だったのです。結局これらの問題で、単行本は光文社により絶版とされました。しかし、後の1983年に角川書店から、問題の写真や証言内容に争いのあるものを削除し、また新たに加筆された「新版」が発売され、これは現在でも入手可能です。


3. 赤旗記者 下里正樹氏(当時共産党員)の介在

ちなみに、この証言をクルクル変える情報提供者の氏名住所さえも・作・者・の・森村誠一は知らなかったと主張しています。この虚言癖のある情報提供者との交渉は、「赤旗」の記者で当時共産党員でもあった下里正樹氏が担当したと森村誠一は主張しています。偽写真につけられたキャンプションについても、意図的に歴史を改ざんしようとしたものでは無いと主張。 逆に、特定のマスコミが共産党を攻撃し、「戦争犯罪を糊塗しようとする」為に集中放火を浴びせ、「言論表現の自由を制約」しようとするものであると反論しています。しかし、歴史の皮肉でしょうか、その擁護した共産党から、後に言論の自由を奪われるのです。

(つづく)


「悪魔の飽食」を現在の目で振り返る(2)

(続き)

4.「日本の暗黒 実録・特別高等警察」赤旗連載、突然中断

さて、このように「言論の自由」を旗印として共産党を擁護した森村誠一が、次に取り組んだ作品は「日本の暗黒 実録・特別高等警察」でした。前作同様、下里記者とコンビを組み特高警察の暗部を描こうというものです。1989年12月より赤旗で連載が開始されました。そして、1年半後、突然の連載中止となったのです。それは、特高に逮捕されていた宮本顕治共産党委員長が殺人事件に関係したという、いわゆる「スパイ査問事件」に触れようとしたからです。当時国会で自民党議員のハマコー(浜田幸一)が宮本委員長を「人殺し!」(だったと思う)と呼んで問題になったのが、この作品のきっかけだったそうです。


5. 赤旗記者、査問、処分、解雇される

この突然の連載中止に抗議した赤旗の記者二名は、査問を受け、処分、新聞社を解雇され、下里氏は共産党からも除名されています。この時の森村誠一の抗議文です。『この文言には多年日本共産党に貢献した同志に対する愛情の一片も感じられず・・一個人を攻撃しています。いわば党を挙げてのいじめです。党の公器である機関紙をいじめの道具に使うとは論外です』。そして、共産党と絶縁しました。


6. 感想

もちろん、ここでは「悪魔の飽食」の全てが捏造だなんて主張はしてませんよ。>国際法の専門家さん
しかし、後に共産党と絶縁する森村誠一が「悪魔の飽食第三部」の別章において、必死に共産党を擁護する姿は、後に彼が置かれる状況を知っている現在の目で読み返して見ると、痛々しくさえ感じるものです。

では。


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