脱ゴーマニズム宣言裁判を楽しむ会議室
1998/05/13(10:24) from Anonymous Host
作成者 :悟のぱぱ (ymaeda@ps.inforyoma.or.jp)
Re: 人道に対する罪についての質問
管二郎さん、こんにちは。

>>また、その時点で採択されていない条約を適用するというのは事後法ですらありません。事後法ならば、少なくとも裁判の時点ではその法は存在するわけですが、第4次ジュネーブ条約となれば、法すらも存在しない状態で裁いたということになり、これはもはや、事後法すらも超える非文明的な所業でしょう。

>それが retroactive な(遡及)適用というものですよね。
>間違ってはいないと思いますが・・・
>でもよく考えると、それは前近代的というか、かなり野蛮ですよね。
>理念は高くても、手続きは野蛮であったといえますね。

私の説明が曖昧でちょっと誤解されたかもしれませんね。
遡及適用というのは、その条約が批准されてから「それ以前の出来事」に対して行われるものではないでしょうか?
すなわち、1949年以前にジュネーブ条約を適用して裁判を行うということは不可能であるという事です。1949年以降に裁判が行われたならば、それは遡及適用と言えますが。言い換えれば、裁判の時点で存在しないものを遡及適用はできない、という事です。

>ただよく考えると、これは典型的な二重基準です。
>つまり枢軸国側の平和に対する罪、戦争犯罪、人道に対する罪は処罰されるが、連合国側の平和に対する罪、戦争犯罪、人道に対する罪は処罰されない。
>もし連合国側がこれらの罪を犯してなければ問題はないのですが、焼威弾・原子爆弾による日本本土無差別爆撃は明らかに人道に対する罪に抵触していると思います。
>たしかに強制売春や強姦などの人権侵害に遭われた慰安婦の方たちの救済は必要だと思います。
>しかし原爆後遺症や爆撃による被害を遭われた方の救済は考えなくてもよいのでしょうか。
>アンフェアな感じがします。

まったくおっしゃる通りです。
ただ、申し上げたかったのは、国家という武力を背景にした強制力でしか他の国家は裁き得ないというシビアな現実の事なのです。つまり、連合国を裁く強制力がなかったから連合国は裁かれなかったという事が言いたかったのです。
もう少しはっきり言えば、要するに「二重基準」ではなく、いつの場合でも戦勝国こそが「基準」なのです。
無論、それを肯定しているわけではないことはご理解下さい。

>もちろん、法的責任がないからといって救済する必要はないと言っているのではありません。
>ただ結局、現時点では日本政府は道義的責任しか見い出すことはできないのであって、それにもとづく救済措置を迅速に行うより他はないのでは、と思います。

なるほど、あなたのお考えはわかりました。
では、あなたは、日本の道義的責任は、どのような事実認定に基づいて存在するとお考えなのでしょうか?
「救済」という書き方をなさいますが、現実には、それは日本による「謝罪」と「賠償」と名がつくものになります。ですから、その事実認定がまず大切だと思います。
つまり、何度もここで申し上げている事ですが、事実認定を曖昧にしたままに謝罪、賠償をすることは、日本に貼られた「性奴隷国家」というレッテルを認めてしまうということに他なりません。
そのあたりはどのようにお考えでしょうか?
私も今、元慰安婦の方々の立場、そして、日本の名誉、それを上手く両立させる方法についてはいろいろ考えています。考えがまとまれば書き込ませていただくつもりです。


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