脱ゴーマニズム宣言裁判を楽しむ会議室
1998/05/14(01:20) from Anonymous Host
作成者 : 北の狼(tngc@po2.nsknet.or.jp)
事実の誤認
>まず [1988年]には、韓国での文民政権の成立、つまり軍事独裁政権が倒され、民主化が飛躍的に進んだ、という大事件が入る。

この上杉氏の文には事実の誤認があります。

韓国の最近の歴代大統領の就任時期は以下のとうりです。

    チョンドファン  09/01/80 -- 02/24/88
    ノテウ      02/25/88 -- 02/24/93
    キムヨンサム   02/25/93 -- 02/24/98
    キムデジュン   02/25/98 --

チョンドファン氏、ノテウ氏はいずれも「軍人」出身です。
そして、キムヨンサム氏が初めての「文民」大統領です。
上杉氏の主張の根幹をなす歴史的事実であるはずの、”[1988年]には、韓国での文民政権の成立、つまり軍事独裁政権が倒され、民主化が飛躍的に進んだ、という大事件”が見当たらないのです。近代韓国で初の文民政権の成立といえば、勿論、キムヨンサム政権をおいて他にありませんが、それは1993年のことです。(ホジョン氏やチャンピョン氏のことは、パクチョンヒ氏よりさらに前の話になりますので、ここでは考慮する必要はないでしょう。)
ちなみに、軍事独裁政権の崩壊といえば、誰でもまっさきに思い出すのは、1960年の李承晩氏のアメリカ亡命でしょう。それとは趣がやや違いますが、1979年には、パクチョンヒ大統領が部下に暗殺され、十月維新体制が幕を閉じたという衝撃的な出来事も記憶にまだ新しいところです。しかし、その直後に文民政権は、勿論、成立していません。

余談ですが、パクチョンヒ政権といえば、当時の日本の”進歩的文化人”達が、北朝鮮を民主的な地上の楽園と礼讃する一方、韓国を軍事独裁ファッショ体制にあえぐ地獄と決めつけ、さらには厚顔にも韓国に民主化を要求して韓国市民から顰蹙をかっていたのが、この時期でしたね。マスコミでは、岩波書店の「世界」や朝日新聞の役割が大きかったと記憶しています。

話をもどして、1988年といえば、チョンドファン氏が退任し、ノテウ氏が大統領に就任した年である。ノテウ氏は1987年の選挙で当選したのですが、その年の10月といえば韓国最大規模の民主化抗争の末、現憲法である、いわゆる民主憲法(第六共和国憲法)が公布されており、それが施行されたのが1988年2月です。
上杉氏のおっしゃる”[1988年]  .........韓国で文民政権成立”とは、”民主化が飛躍的に進んだ”かどうかは別にして、このあたりの事情を意味するものと、好意的に解釈しておきます。


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