判定文書改変:潮出版社への再質問状

(1999年5月18日)


『ペンの陰謀』松本論文の件ほか(1999年5月18日)

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潮出版社御中

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時下益々ご清栄のこととおよろこびもうしあげます。

さて、私は、御社刊行の『ペンの陰謀』(本多勝一氏編集、1977年5月初版刊)において松本道弘氏の「勝負あった!佐伯/七平論争」原文(『人と日本』1977年1月号収録)の最後の4段落が無断で削除されていることに関して、事情をお教えいただきたい旨の4月12日付けおたよりをさしあげた者です。(現在国会図書館と東京都中央図書館に所蔵されている『ペンの陰謀』初版本ではいずれも、松本論文の該当箇所が欠落しています。)御社への質問は次のとおりでした。

【質問1】『人と日本』掲載の松本論文の最後の4段落が『ペンの陰謀』では削除されていることを、御社はご存じだったのでしょうか。もしご存じだったのなら、削除の背景をご説明ください。

 1-1)佐伯真光氏、松本道弘氏、本多勝一氏のうちどなたの発案による削除なのでしょうか。

 1-2)削除の意図は何でしょうか。

 1-3)『ペンの陰謀』には削除したことの断わり書きがみあたらないのですが、これはなぜなのでしょうか。

 1-4)裁定文の一部が削除されているにもかかわらず、どうして佐伯真光氏の論文には「本書には全文が再録されている」と書かれているのでしょうか。

 1-5)その他、この件に関して情報をお持ちでしたらこの機会に御開示くだされば幸いです。

【質問2】以上の諸点が不明の場合、御社として当時の事情を調査なさるお考えはおありでしょうか。

【質問3】事情の如何に関わらず、「全文が再録されている」と称して実は文書の一部を断わりなしに削除した上出版することは事実に反する情報を読者に与えるものであり、出版倫理の観点からみていかがなものかと思いますが、御社としてはこの点についてどのようにお考えでしょうか。

【質問4】『ペンの陰謀』の新しい刷では上記の食い違いは是正されているのでしょうか。あるいは、次回増刷/改版時に是正なさるお考えがおありでしょうか。

この件に関しましては別途、佐伯真光・松本道弘両氏にも問い合わせておりましたが、最近になって御二人からあいついで御返事がいただけました。またそのおたよりを公開することについても御二人から御承諾をいただいております。(コピーを同封いたしますので、御一読ください。)両氏の文面から判断するかぎり、佐伯氏はおろか原著者の松本氏すら『ペンの陰謀』が刊行されるまで削除について知らされておらず、削除は編集側単独の判断で行なわれたように読み取れます。もしこれが事実とすれば、その結果として、万人の基本的人権の不可欠の一環をなす送り手・著者としての表現の自由と受け手・読者としての知る権利とがともに侵害されたことになり、故山本七平氏および松本道弘氏の思想全般への評価や個々の言説に対する賛否云々とは全く別の次元で重大問題とみなさざるを得ません。

つきましては御二人からのおたよりもふくめ、これまで明らかになった事実関係をインターネット等を通じて近く公表するつもりでおります。しかしながら、この件は御社の出版言論機関としての社会的信用にもかかわる問題であり、特に佐伯氏はそのお手紙の中で御社編集部を名指ししておられますので、御社の名誉を不当に損なうことのないよう、事実関係において御社側の認識と食い違う部分がないか確認のために再度おたよりをさしあげた次第です。もし以下の両氏からの回答をご覧になり補足・修正を要する箇所があるとお感じになりましたら、そのむねをご連絡いただければそれを御社からの回答として両氏のおたよりと併せ公表させていただきます。その際、上記【1】〜【4】の質問にお答えくださるとともに次の三点(【5】〜【7】)についてもご説明くださればさらに幸甚です。

【質問5】(【質問1】に関連して)『ペンの陰謀』の編集者・本多勝一氏は具体的にはどのような形で削除に関与しておられたのでしょうか。また、御社編集部はそれにどのように関わっておられたのでしょうか。(御社は、『ペンの陰謀』に収録された松本論文が『人と日本』掲載の同論文の全文ではないことを、同書発行以前にご存じだったのでしょうか。本多氏が該当箇所を松本・佐伯両氏に知らせることなく無断で削除することを判断・決定なさり、それに沿って作業を進めるよう御社編集部に指示されたと理解してよろしゅうございますか。それとも、御社編集部と本多氏が協議の上で決定なさったのでしょうか。あるいは、御社編集部が本多氏に対して削除を提案なさったのでしょうか。)

 話はさらに遡りますが、本多勝一氏はかつて御社発行の雑誌『潮』1975年7月号掲載「欧米人記者のアジアを見る眼」および同年10月号掲載「カンボジア革命の一側面」においてクメール=ルージュによる大量殺戮は

「全くウソだった」(10月号278ページ)

と断言するなどポル=ポト派擁護の論陣を張っておられました。しかるに、「カンボジア革命の一側面」をほぼそのままの形で収録したすずさわ書店刊『貧困なる精神4集』(1976年発行)は第9刷増刷時(1990年)に至って無断で書き換えられ、上述の虐殺否定の文言が削除されたかわりに大虐殺の真偽は

「事実そのものが全くわからず」「軽々に論じられない」

という原文にはなかった字句が挿入されるなど、現在では本多氏の著作から当時の虐殺否定発言がことごとく抹消されています。この件について福岡在住の医師・西村有史氏が昨年5月に本多氏に問い合わせられたところ、本多氏は5月25日付けの返信で“その件については近く『潮』誌上で釈明する”ことを約束なさったそうです。それ以来すでにほぼ1年が経過しておりますが、

【質問6】1975年当時の本多勝一氏のカンボジア虐殺否定発言が著作から無断で削除・改変されていることへの釈明文掲載について『潮』編集部と本多氏との間でうちあわせは進んでいるのでしょうか。近い将来本多氏の釈明記事を『潮』に掲載なさる具体的な計画をお持ちですか。

【質問7】御社として、『潮』に掲載された本多氏の記事の核心部分の誤り(クメール=ルージュによる大量殺戮は「全くウソだった」など)に対して何らかの是正措置をおとりになる考えはおありですか。

 因みに、往年の本多氏のカンボジア虐殺否定発言は20年後の1995年に電子ネットワーク界で再発見・報告されたのを皮切りに、最近では『噂の真相』1998年10月号、『正論』1998年10月号、『トーキング・ロフト3世VOL.1』(発行日1999年5月10日)等の活字系媒体でもとりあげられています。また、この件については次のサイトに情報がまとめられていますので、あわせてご参照いただければ幸いです。

http://hello.to/hondaken/

 なお、5月末日までに御社から何らかの御返事がいただけない場合、御異存なきものとみなしてこれまでの経緯を公開にふみきりますので、そのむねあらかじめ御了解ください。

佐佐木嘉則拝

追記

 この書簡と同一内容の質問状を本日(5月18日)付け電子メールで御社

webmaster@usio.co.jp

宛にお送りしましたので、ご承知おきください。


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最終更新日 1999/11/01 (Y/M/D).