本多勝一研究会重要文献解題

と学会(唐澤俊一、志水一夫、藤倉珊、皆神悠、山本弘)座談会

「この「ハルマゲドン本」がすごい!」

『別冊宝島30』1995年10月号「特集・素晴しき洗脳」収録

文責:佐佐木嘉則


解説

 1995年の地下鉄サリン事件で一躍脚光を浴びた、オウムの教義「ハルマゲドン」。ノストラダムスの予言「1999年第七の月、恐怖の大王」を4年後にひかえて、世は「ハルマゲドン」ブームの観を呈してまいりました。と学会の面々が蘊蓄を傾けて「ハルマゲドン本」を語ります。

ここに注目!

「ハズれた予言は全部カットしてある」とか、「そもそも自分が言い出したのに」「もう逃げを打ってます」とか、どっかで聞いたような話。

読みどころ

赤字による強調は引用者による)

志水 『幻魔大戦』が劇場用アニメになった時、「ハルマゲドン接近!」って毎日TVのCMで言ってたんだけどね。

唐澤 まあ、大きな戦争が起きるたびに「これが世界の最終戦争なんだ。聖書に書かれているハルマゲドンなんだ」って、巻き込まれる人たちはみんなそう思ってきたわけです。

皆神 第一次世界大戦のときは、エホバの証人が「これは最終戦争だ」って言ってましたね。例えば「一九一四年にハルマゲドンがくる」なんてことを主張してたんだけど、でもこれはエホバの証人のオリジナルではなく、もともとはセブンスデイ・アドベンティストの宣教師が考えついた話をエホバの証人が採用しちゃったんですよ。一九一四年に運よく第一次世界大戦になってみんな興奮したんだけど、それが最終戦争にならなかったんで逆に白けちゃったというね。

志水 当時のエホバの証人って、エジプトの大ピラミッドの羨道(玄室までの通路)の長さが予言になっているというピラミッド予言学にもハマってたんだよね。今の信者さんたちは知らないけれど。

山本 エホバの証人って、何度も何度も「世界の終わりが来る」なんて言ってますよね。ぼくが子どもの頃に見たエホバの証人のパンフレットの通りなら、一九七五年に世界は滅亡してなきゃいけないんだけど(笑)。

皆神 ウィリアム・ウッドの『エホバの証人 マインド・コントロールの実態』(三一書房)によると、エホバの証人が言うには、一七九九年に「終わりの日が始まった」そうで、一九一四年に「キリスト教が滅び」一九一六年が「ハルマゲドンの真っ最中」でそして一九一八年に「キリスト教会は滅び」で、でもって一九七五年が来て、「秋には神の千年王国が始まる」とか言っていたそうな。一九七五年っていうのは、人類創造からちょうど六千年目がこの年だからなのだそうだけど、こんなことばかり言って、結局は全部ハズレちゃったんだよね(笑)。

唐澤 その点旧来のキリスト教の頭のいいところは、世界の終わりは近い。それは明日くるかも知れないと言って、でも「明日くる」とは言わないところなんだ。

山本 「世界の終わりは近い」って、いったいどれだけ近いんだ(笑)。『ヨハネ黙示録』の第二十二章にはね、神様の言葉として「見よ、私はすぐに来る」と書いてあるんですよ。この「すぐに」というのは、ヨハネ黙示録が書かれた時点からすぐに、のはずなんで、本当なら紀元二世紀くらいにはきてなくちゃいけない。

志水 「ザ・ロード・イズ・カミング」で、キリストさんは、もう向こうを出ましたって、ソバ屋の出前じゃない(笑)。

皆神 そりゃ神様だから我々と時間の感覚が違うんだよ。たかが千年や二千年くらいは誤差の範囲ってことで(笑)。

唐澤 だからさ、「いつまで待ってもハルマゲドンがこないなら、いっそ自分で起こしてやろう」なんて考えるオウムみたいなのが出てくるんだよ。それがいちばん確実だもんね。

皆神 コワいのは一九九九年だね。ぜ─ったい、何かしでかるヤツらが出てくるよ。

(中略) 

八〇年代世界のトンデモ予言集

唐澤 ノストラダムス以外にも、いろんな予言者がいるよね。ケネディ暗殺を予言したという人たちの中でも、もっとも有名なジーン・ディクソンとかさ。

山本 あの人の言うことってトッピすぎるんだもん。「八〇年代の半ばころ、太平洋に巨大隕石が墜落する!」とかさ。この人の言ってることが正しければ、とっくに最終戦争は起こってなきゃいけないんだけどね。

皆神 雑学本『ザ・ワルチン・ブック』の編集者たちが一冊まるまる予言ネタでまとめた『ワルチン版大予言者』(二見書房)は、古今東西の予言を集めた予言の百科事典みたいな本なのだけど、予言問題を考える時に大いに参考になるよね。

山本 この本にはね、「七人の大予言者が予測した未来世界」という章があって、八〇年以降のことをいろいろ予言してるの。で、初版から十年たって『ワルチン版予言大全』という改訂版が出たんだけど、そこではハズれた予言は全部カットしてある(爆笑)。

皆神 この本、欄外にある未来年表が面白いね。「一九八八年、数々の科学実験の結果、アインシュタインの相対性理論が部分的に誤りであることがわかる」だってさ(笑)。ま、「相対性理論は間違っていた」って主張している一部の方々には、すごく喜ばれそうな予言ですけどねえ(笑)。

山本 「一九九二年、大都市上空に浮かぶ宇宙船基地は太陽エネルギーをマイクロ波に転換して地球に送る」とかね。

唐澤 この頃の人たちって、二〇世紀の終わりくらいにはSFにあるようなあらゆる科学技術が実現すると思っていたんだよね。映画『二〇〇一年宇宙の旅』を監督したキューブリックは、「二〇〇一年になっても月ロケットなんて全然できない。オレが映画で描いて恥かいたじゃないか」って怒ったという。

山本 これなんか象徴的だね。「一九九一年、ガソリンエンジンの自動車がアメリカ、ヨーロッパ、日本の首都圏で禁止される。」

皆神 九〇年の予言もすごいね。「男性宇宙飛行士が、女性を巡る口論の末、宇宙船の中で同僚を撃ち殺す」(笑)。どういう予言なんだ。宇宙船の中にまで銃を持って行くのかねえ。

志水 スペース・ガン(宇宙遊泳用の携帯噴射機)のことじゃないの(笑)。

山本 『ワルチン版大予言者』を改訂版しか持っていない人は可哀想だね。古いやつの方が絶対面白いのに。

「ちびまる子ちゃん」に学べ!

(中略)
唐澤 いよいよ九九年が近づいてきて「さあ今のうちだ」てんで、これからもっとすごい本が出てくるだろうね。「九九年」と名前がつけば何だって出版してくれるような雰囲気だもの。

ヘンな奴も出てくるだろうな。「ノストラダムスの予言は、オレが止めた」とか。ただ、九九年を過ぎても、ノストラダムス本は出続けるだろうけどね。

山本 予言研究者の言い訳を聞くのも楽しみです。

藤倉 もう五島さんは逃げを打ってます。『聖徳太子[未来記]の秘予言』(青春出版社)では二〇一七年までに、とか。そもそも自分が言い出したのに。

唐澤 実際、あの当時大学行くのとか、結婚をやめちゃった人がいたわけですから、罪ですよね

(中略)

山本 でも本当に九九年の七月になったら「もうどうでもいいや、海外旅行にでも行こう」って、会社辞めちゃう人が出てくるかもしれない。

唐澤 それで何も起こらなくて、五島さんに文句を言う奴が出てきたりして。五島さんどうするつもりなんだ、九九年になったら。

ここが知りたい


基礎研究室へ戻る
ホームページへ戻る


最終更新日2000/06/29 (Y/M/D).